在留資格「特定技能」とは~特定技能外国人について徹底解説
改正出入国管理法(出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律)に基づいて、在留資格「特定技能」が新設されました。この制度によって、介護や外食、建設、農業、ビルクリーニングなど人材不足が著しい14種の特定産業分野において、外国人人材を受け入れることが可能となりました。在留資格「特定技能」とはどのような制度なのかご説明していきます。
在留資格「特定技能」とは
わが国では人材不足が深刻となっており、特に特定の分野においては事業の継続も厳しい状況にあります。
人材不足としてたびたび報じられる分野においては、「介護」「外食産業」があり、その他にも「建設業」や「農業」「宿泊業」などについても厳しい状況であることが知られています。
2025年までに必要な人材は145万人以上であることが分かっており、国内だけでは賄えない状況となっています。
このような状況を受け、2018年12月に改正出入国管理法が制定され、在留資格「特定技能」が新設されることによって、特定の分野(特定産業分野)において外国人人材の受け入れが可能となったのです。
特定技能外国人を受け入れる特定産業分野とは
特定技能外国人を受け入れることができる分野である『特定産業分野』が定められています。
特定産業分野とは、その分野内において生産性を向上したり、人材確保のための取り組みを行ってもなお、人材確保が難しいとされている分野のことを指しています。
特定産業分野はつぎの14分野が定められています。
①介護 ②ビルクリーニング ③素形材産業 ④産業機械製造業 ⑤電気・電子情報関連産業 ⑥建設 ⑦造船・舶用工業 ⑧自動車整備 ⑨航空 ⑩宿泊 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業 |
在留資格「特定技能」の種類と取得要件
外国人は地方入国在留管理官署によって在留資格を認定されることによって日本に在留することが可能となります。
在留資格「特定技能」には、『特定技能1号』『特定技能2号』の2種類があります。
『特定技能1号』の概要
分野別に行われる評価試験などによって確認 a、国際交流基金日本語基礎テスト b、日本語能力試験(N4以上) ※a、bどちらかに合格 ※技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除で申請が可能 生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認 ※技能実習2号を良好に修了した外国人は試験等免除で申請が可能在留期間 1年、6か月または4か月ごとの更新、通算で上限5年まで 技能水準 日本語能力水準 家族の帯同 基本的に認められていない
『特定技能1号』とは、14種の特定産業分野において、相当程度の知識や経験とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。在留期間の上限は5年までと定められています。
受け入れの分野において即戦力となる技能や日本語能力を求めらており、その確認が行われることになっています。
技能水準としては、実務経験だけで認められることはなく、試験などによって確認することが必要となります。技能実習2号を終了している場合においては試験などが免除されることになります。
また日本語能力については、日本での生活や業務に必要な日本語能力を有しているのかどうか、読解試験やリスニングテストなどによって確認することが必要となります。日本語能力においても技能実習2号を終了している場合においては試験などが免除されることになります。
このように、技能実習2号の修了者は『在留資格「特例措置」の新設に係る特例措置』の条件を満たしている場合においては、特定技能1号に変更することが可能となっています。
『特定技能2号』の概要
在留期間 3年、1年又は6か月ごとの更新 技能水準 分野別に行われる評価試験などによって確認 日本語能力水準 試験等での確認は不要 家族の帯同 要件を満たせば配偶者や子において認められる
『特定技能2号』とは、14種の特定産業分野において、特定産業分野において熟練した技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格です。(※ただし現在は「建設分野」「造船・舶用工業分野」の2分野のみとなっており、その他の産業分野においては当面見送られることになっています。)
特定技能2号では、在留期間の上限は定められておらず、定められている期間ごとに更新することによって、在留が認められることになります。
条件を満たした場合においては、永住申請ができるようにもなります。
技能水準については試験などで確認されることのなりますが、日本語能力においては確認は不要とされています。
在留資格「特定技能」を取得するための条件
在留資格「特定技能」を取得するためには、上記どちらかの条件を満たす必要があります。
「特定技能評価試験」とは、各業界団体が国の基準をもとに行われる「特定技能測定試験」「日本語能力水準」の試験のことを指します。
「技能実習2号」とは、2~3年目に行われる技能等の習熟を確認するためのものです。「技能実習1号」は、1年目のはじめ2か月間に講習により行われています。第1号技能実習から第2号技能実習に移行するためには、所定の学科試験と実技に合格しなければなりません。
受入れ機関(特定技能所属機関)と登録支援機関について
『受入れ機関(特定技能所属機関)』とは、外国人を受けいれる企業や個人事業主のことを指しており、外国人と適切な雇用契約を結んで支援していかねばなりません。
『登録支援機関』とは、受入れ機関(特定技能所属機関)から委託を受けて、外国人を受け入れて業務を実際に実施していきます。
受入れ機関(特定技能所属機関)について
受入れ機関(特定技能所属機関)は、外国人を受け入れるためにつぎのような基準が定められています。
|
また外国人と雇用契約を結んだ際には、報酬を適切に支払うなど確実に契約内容を履行することが必要で、適切な支援や必要な届出を確実に行わねばなりません。
登録支援機関について
登録支援機関は、特定技能1号外国人から委託された外国人の支援業務を適切に遂行しなければなりません。
登録を受けるためには支援機関自体が適切に運営されている必要があり、適切に外国人を支援する体制を有している必要があります。
登録機関は5年であり、更新手続きや必要に応じて各種届出を行わねばなりません。
特定技能外国人を雇用する流れ
特定技能外国人を雇用するためには、面接などを経て採用の内定を決定したのちに「特定技能雇用契約」を結ぶことになります。
「特定技能雇用契約」とは、在留資格を得た外国人を労働させるために必要な契約であり、業務内容や業務時間、報酬などを適切に定めておかねばなりません。
契約を締結後には「1号特定技能外国人支援計画」を策定します。
業務上のことだけではなく、日常生活などの社会生活全般において、どのように支援を行うか計画することが必要です。
採用する外国人を特定技能で雇用する場合、在留資格から「特定技能」への変更しなければなりません。出入国在留管理庁への変更申請が必要となっています。
変更申請が済めば契約時に策定した支援計画に基づいて支援を行うことになり、実際に雇用開始となります。
在留資格「特定技能」と「外国人技能実習生制度」の違い
冒頭からお伝えしてきた在留資格「特定技能」ですが、「外国人技能実習生制度」と同じように考えている方も多いのではないでしょうか。
「外国人技能実習生制度」とは、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」に基づいた制度のことを指しており、国際協力・国際貢献を推進することを目的としたものです。
技能実習法にも「労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)と定められていることが分かります。
あくまで開発途上国の経済発展を目的として受け入れるものですから、技能等の習得・習熟・熟達を図らねばなりません。
「特定技能」は、わが国の労働力を確保するために外国人を雇用するための在留資格ですから、特定の業種において幅広く労働力とすることが可能なのです。
この記事をシェアする